法曹の養成/改革の本旨に戻らないと
2011/09/25神戸新聞社説
頼りがいのある、身近な存在になってほしい。 国民の期待とは裏腹に、司法は敷居を高くしたまま、優等生の枠から抜け出せないのではないか。 法科大学院の修了者を対象にした今年の新司法試験の合格率が、5年連続で過去最低を更新した。 6回目の今年は最多の8765人が受験し、合格者は2063人。 政府の司法制度改革審議会が改革の意見書を提出して、今年で10年になる。 「法の支配」を社会の隅々に行き渡らせ、泣き寝入りなどをなくすのが改革の原点だった。 意見書は、合格者を「2010年ころに年間3千人」「法科大学院修了者の7〜8割が合格」という目標を示した。 実態はかけ離れたものになっている。 新試験の導入後、それまでの4〜5倍の合格者が送り出されるようになり、弁護士志望者の就職難が新たな問題として浮上した。 確かに、法科大学院の74校は多過ぎるし、大学院間の合格率の開きも見過ごしにできない。 社会には法的支援を得られずに埋もれた人はたくさんいる。 一方で、裁判所の支部管内に弁護士が1人しかいない司法過疎地は減っているが、弁護士の都市偏在は変わらない。 こうした状態を解消するには、法科大学院を分散配置し、さまざまな経歴を持つ学生を集め、多様な法曹の養成に努めることだ。 社会はエリートの法曹ばかりを望んでいるわけではないということだ。 |